2022.03.07
ENEOSの現場スタッフから車のメンテンスについて学ぶ企画「プロから学ぶ車のメンテナンス術」。今回のテーマはタイヤの空気圧です。 日本自動車タイヤ協会(JATMA)が実施した東名浜名湖SAでの2019年定期調査によると、点検した乗用車の約5割が空気圧不足であることが分かりました。また、同協会が2020年に実施した別の調査によると、毎月点検しているドライバーは約25%。ガソリンスタンドのセルフ化が進み、タイヤの点検機会が減少したこともあり、このような空気圧不足を含む不良率は年々増加傾向にあります。 そこで、ENEOS Dr.Drive 谷田部SSの加藤優磨さんに、タイヤの空気圧チェックについて聞いてきました。空気圧不足・過多によるタイヤ・運転への影響や空気圧の点検・充填のやり方、失敗しないためのメンテナンスのコツをご紹介しています。
2022.03.07
タイヤの空気圧のメンテナンスを怠っているとどのようなトラブルに見舞われるのでしょうか? ここでは、空気圧不足・過多の状況別にそれぞれのトラブルの具体例をご紹介します。
タイヤの空気圧を適正値よりも低い状態で放置した場合、タイヤの劣化が進む、またはタイヤが損傷する、といった事象が発生し、運転中の大きなトラブルにつながる可能性もあります。そもそもタイヤには車ごとに空気圧の適正値が決まっており、この適正値を下回った状態を「空気圧不足」、上回った状態を「空気圧過多」と言います。以下は、空気圧不足によって起こるトラブルの一例です。
*ハイドロプレーニング現象:タイヤと路面の間に発生した水膜により一時的に車が浮いた状態になり、ハンドル・ブレーキが効かなくなる。
タイヤは基本的には経年劣化していくものです。その上で、空気圧が低い状態だとタイヤに収縮運動の負荷がかかり、その分劣化するスピードが早まります。ここで言う収縮運動とは、タイヤの特定の箇所が接地時に車の重さで潰れるように広がり、回転して上に来るにつれてもとの形へ戻る、といった一連の動きを指します。したがって、この収縮運動の負荷を減らすために、空気圧を適正に保っておくことが重要です。また、空気圧が低い状態で走行を続けることで、タイヤのサイド部分のコードが損傷するブリーディングCBUやタイヤに異常な熱が生じてトレッドが剥がれるトレッドセパレーションが発生する危険性があります。
タイヤの空気圧のトラブルは、適正値よりも高過ぎる場合にも起こります。代表的なトラブルとして、以下のものが挙げられます。
空気圧が適正値よりも高いタイヤの状態は、空気がパンパンに入っている風船と似ています。そのため、縁石や落下物などに接触した場合にパンクやバーストが起こりやすくなります。また、タイヤの接地面がセンター部分に集中するため、センター部分が偏って摩耗し、本来の耐用期間より短くなることも。このようなトラブルを避けるためにも、空気圧の入れ過ぎは控え、適正な空気圧を保ちましょう。
ENEOSジェネレーションズのサービスステーション(SS)では空気圧の点検・充填が可能です。ここからは、SSでの点検・充填サービスの活用の流れや作業手順をご紹介します。
タイヤの空気圧を点検・充填したいときは、SSのスタッフに依頼すると手軽に実施できます。ENEOSジェネレーションズのSSでは、基本的に無料で対応しています。タイヤの空気圧点検・充填のみの利用も可能です。以下は、給油のついでに空気圧点検・充填するときの流れです。
▼SSでタイヤの空気圧を点検・充填するときの流れ
なお、SSで用意している点検・充填機を使って、自分で実施することもできます。点検・充填機は店舗によって置き場所が異なりますが、比較的分かりやすい場所に置かれていることがほとんどです。ピット前やエアチェックコーナーの看板を確認してください。もし分からない場合は、スタッフにお声がけください。セルフで点検・充填する方法は以下で詳しく解説しています。
▼空気圧点検・充填機(エアタンク式)
▼空気圧点検・充填機の置き場所例
空気圧を点検・充填するときは、次の6つのステップで進めていきます。
(1)空気圧の適正値とタイヤの外観をチェックする
(2)タイヤのエアバルブのキャップを外す
(3)空気圧点検・充填機のホースの先をエアバルブに押し当てる
(4)エアゲージから空気圧を確認する
(5)「+」「−」のレバーを倒して適正な空気圧に調整する
(6)エアバルブにキャップを取り付ける
以下では、各ステップの操作方法やポイントをご紹介します。なお、点検・充填機にはいくつかタイプがあり、今回は一般的なエアタンク式を利用するケースを前提としています。
空気圧の点検・充填機を使う前に、まずは自車の空気圧の適正値とタイヤの外観をチェックしましょう。空気圧の適正値は車によって異なります。適正値を把握せずになんとなく空気を補充する人も少なくないですが、「1.状況別|タイヤの空気圧のトラブル例」で説明したように、空気圧不足・過多のどちらもトラブルのもとになるため、必ず点検・補充前に確認しておきましょう。空気圧の適正値が記載されているステッカーは、一般的に運転席のドア付近に貼られています。なお、今回使用した車の空気圧の適正値は、前輪・後輪ともに240kPa(キロパスカル)でした。
▼左:ステッカー貼付場所、右:ステッカー拡大
さらにタイヤの外観をチェックし、空気を補充しても問題ないことを確認しましょう。主なチェックポイントは以下の3点です。
傷やひび割れがあるタイヤは充填したときに破裂する可能性があります。また、製造日から5年以上経過しているタイヤは、メーカーによりタイヤの溝が減っていなくても交換が推奨されており、充填前にタイヤ自体のチェックが必要です。タイヤには製造日が記載されており、そこから経過年数が分かります。いずれかのポイントで気になるところがあれば、空気圧点検・充填を実施する前にSSのスタッフなどのプロに見てもらいましょう。
▼タイヤの製造年月日の見方
▼タイヤの外観チェック
(1)のチェックで問題なければ、次にタイヤのエアバルブのキャップを外します。エアバルブとは、タイヤに空気を注入するときの入口部分。入口から空気が漏れないように普段はキャップでふさがれています。
▼外れる直前のエアバルブのキャップ
次に、キャップでふさがれていたエアバルブの先端に空気圧点検・充填機のホースの先端を押し当てましょう。押し当てるだけで、自動的に現状の空気圧を測ることができます。
▼エアバルブに接続している空気圧点検・充填機
空気圧点検・充填機のホース先端とタイヤのバルブキャップの先端をしっかり噛み合わせた上で、エアゲージの表示から空気圧を確認してください。実際に測ってみたところ、約200kPaだったので、この車の適正値240kPaに対して40kPaほど不足していることが分かります。
▼空気圧の測定結果
エアゲージに表示される目盛りが適正値よりも低い、あるいは高い場合には、「+」「-」側にレバーを倒して、適正な空気圧になるように調整します。
「+」操作 | 「-」操作 |
---|---|
レバーを右に倒す |
レバーを左に倒す |
空気圧を測定・充填できたら空気圧点検・充填機のホースを抜き、エアバルブのキャップを元のように取り付けます。
▼元に戻す直前のエアバルブとキャップ
セルフで空気圧点検・充填機を利用するときの失敗例として、エアバルブへの差し込みが甘く、きちんと測定、充填できていないケースが挙げられます。「シュー」といった空気が漏れているような音がしたら、きちんと差し込めているかを確認してみましょう。
また、エアバルブのキャップをタイヤのホイールの中に落としてしまうケースも稀にあります。ホイールのタイプによっては、ホイールキャップごと外さなければ取り出せない場合もあります。エアバルブのキャップを外す、取り付ける際は慎重に行ってください。
▼バルブキャップを落として、中に入ってしまうこともあるホイールの穴
最後に、タイヤの空気圧を適切に保つためのメンテナンスのコツをご紹介します。
タイヤの空気圧点検・充填は給油のタイミングと併せて実施するのが丁度良いと言われています。一般的に給油の頻度は月に1~2回程度が多く、推奨されている空気圧点検の頻度も月に1回程度です。給油と同じタイミングで点検・充填することを習慣付けておくと、気付いたら空気圧不足になっていた、といった状況を避けられるでしょう。
タイヤの空気圧を点検・充填するタイミングは、タイヤ内の空気が温まっていない状態が理想です。空気は温められると膨張し、冷やされると収縮します。そのため、高速道路や夏場の炎天下、長距離などを走行した後は、タイヤ内の空気が温められて膨張しており、通常よりも空気圧が高く表示されます。実際は空気圧不足でも一時的に適正値を示す可能性があるため、出発から早めのタイミングで温度が上がる前に点検・充填するのがおすすめです。
大前提として、車ごとに設定されている適正な空気圧を保ってください。中には「適正値よりも高めに入れよう」「250~270kPa入れておけば良い」といった情報も見られますが、これは車の種類や使い方によって合う場合と合わない場合があります。安全でかつタイヤを長く使うためには、適正値を保つことが一番確かな方法と言えます。
タイヤには車ごとに適正な空気圧が設定されており、それを下回っても、上回っても、運転やタイヤ自体に悪影響が及びます。自分で作業することに不安な方でもSSのスタッフに依頼すれば、手軽に点検・充填できるので、給油のついでにぜひお声がけください。
タイヤは車の中で唯一道路に触れているパーツで、その分安全に走行する上で重要なパーツと言えます。日々の点検やメンテナンスを実施することで防げる事故は多くあります。空気圧の点検・充填を習慣付けて、重大な事故を未然に防ぎましょう。
【ENEOS Dr.Drive谷田部SS 加藤優磨さん】
※ENEOSジェネレーションズのSSで働くスタッフの仕事内容はこちらでも詳しく紹介→「カーライフビジネスを知る」