2022.03.07
ENEOSの現場スタッフから車のメンテンスについて学ぶ企画「プロから学ぶ車のメンテナンス術」。今回のテーマはバッテリー液です。ENEOS 摂津鳥飼SSの堀家俊希さんに、バッテリー液の点検の必要性やチェック方法について聞いてきました。バッテリー液の役割や液量不足のリスク、自分で点検するときの手順やポイントをご紹介しています。
2022.03.07
バッテリー内に充填されているバッテリー液にはどんな役割があるのでしょうか? また、バッテリー液のチェックを怠っていた場合のリスクについても解説します。
バッテリー液とは、バッテリー内で化学反応を起こすために充填されている液体です。化学反応が起こることで、バッテリーで放電・充電が可能になります。放電とは、バッテリーから電流を放出し、発進時にエンジンを動かすための電力を供給すること。ヘッドライトやドライブレコーダーなどの機器類への電力供給も同じ仕組みです。充電とは、走行中にエンジンの動力を利用して発電した電力を貯めておくことです。バッテリー液は、これらの機能を適切に作動させるために必要となります。
バッテリー液の正体は硫酸を水で薄めた希硫酸です。通常の硫酸に比べると濃度が低いものの、皮膚にかかると炎症を起こし、やけどにもつながるため、取り扱いには注意が必要です。
バッテリー内に充填されているバッテリー液には適正量があり、不足している場合はバッテリーで蓄電できる容量が低下します。これは、通常バッテリー液に浸っているはずの電極板がむき出しになることで劣化してしまうためです。バッテリー液が不足するとバッテリーの容量低下に伴い、バッテリー上がりが起こりやすくなります。また、最悪の場合バッテリー内での化学反応により発生したガスが原因で爆発し火災が発生する危険性があります。
なお、最近のほとんどのバッテリーではバッテリー液の減少量がごく微量で、適正量を維持したまま交換期限を迎えます。自然に、または走行によって減少して適正量を下回る、といった事象は起きません。ただし、何らかのトラブルによってバッテリー液が漏れ出して液量が減少する、といった可能性があるので定期的な点検は必要です。
バッテリー液の適正量は、バッテリーに表示されている「UPPER LEVEL」を上限に「LOWER LEVEL」を下限として、この間を指します。新品のバッテリーの場合、基本的には「UPPER LEVEL」の少し下のところまで充填されています。
何らかのトラブルや理由があってバッテリー液が減少し、液面が「LOWER LEVEL」よりも下回った場合は、新しいバッテリーへの交換や適正量に戻すための補充が必要です。ただし、バッテリーの種類によっては補充ができないものもあり、また補充ではバッテリーのトラブル自体を解消できないので、新品への交換を推奨しています。
最近のバッテリーは、製品技術が上がって密閉性が増したことでバッテリー液がほとんど減らないタイプが普及しており、昔よりも点検頻度を落としても大きなトラブルにつながりにくくなっています。ただし、バッテリー上がりが起きづらくなったわけではありません。
近年特に注意しておきたいのが、ドライブレコーダーやカーナビを後付けしたケースです。バッテリーはその車に本来備わっている機器と必要な電力に応じたものが設置されています。そのため、例えば24時間録画できるドライブレコーダーを後付けした場合にバッテリーで供給できる量を上回り、バッテリー上がりが起こる可能性があります。電子機器類を後付けした場合は、SS(サービスステーション)や専門の店舗で電圧をチェックしてもらうと安心です。
最近のバッテリーはバッテリー液が減りにくくなっていますが、もし減っていた場合はバッテリー上がりや最悪の場合火災などを引き起こす可能性があります。ここでは、バッテリー液の残量をチェックするタイミングや自分でチェックする方法を解説します。
バッテリー液の残量チェックは、3カ月に1回程度がおすすめです。近年のバッテリーは問題さえなければ、補充が必要になるほど減少することはほとんどありません。ただし、何らかの不具合によりバッテリー液が減少する可能性は残っており、場合によっては大変な被害を負いかねません。そのため、定期的な点検は必ず行ってください。
ENEOSジェネレーションズのSSでは、バッテリー液の残量チェックと合わせてボンネットまわりの点検も無料で承っています。同じタイミングでボンネットまわりのほかのパーツ点検もやっておくと安心です。
※Dr.Driveの無料点検サービスについて詳しくは→「点検・整備(無料安全点検)」
バッテリー液の残量チェックは、自分で実施することも可能です。旅行などで長距離走行する場合は出発前に念の為にチェックしておくのがおすすめです。以下では、バッテリー液チェックの4つの手順を説明します。
チェックするときは、次の3つのアイテムを用意しておきましょう。不具合があってバッテリー液が漏れ出している可能性もあるので、手袋は液体を通さないようビニール素材のものがおすすめです。
ビニール手袋 | ウエス | ライト |
---|---|---|
バッテリー液をチェックするために、まずはボンネットを開けます。このとき周囲が安全であることを確認してからチェック作業を開始してください。なお、高速走行や長距離走行した後はボンネット内が高温になっている可能性があります。できるだけ出発前にチェックしましょう。
走行後にチェックする場合は、バッテリーに触れる前にボンネット内が高温になっていないか手を軽くあてて確認してみてください。特にバッテリーまわりが高温になっているとチェックの際にやけどする危険性があります。
バッテリー液の残量をチェックする前にウエス(汚れを拭くための適当な布)を使って、バッテリー上部や端子付近の汚れを拭き取っておきましょう。バッテリー上部を清潔に保っておくことで端子の腐食を防止することにもつながります。もし端子のまわりに粉がふいている場合はバッテリーの寿命が近づいているかもしれません。すぐにSSや専門の店舗で状況を見てもらってください。
バッテリー液量はボンネットにバッテリーを設置したままチェック可能です。バッテリー上部を軽く掴み、前後・左右に軽く揺らすことで液面が揺れて側面から見えるようになります。暗くて見えづらい場合は、車を明るい場所に移動させるか、ライトで照らすと見えやすくなるでしょう。
なお、バッテリーの種類によっては側面から液面が見えないタイプもあります。このタイプにはたいていバッテリー液の残量を示すインジケーター(状況を示すサインの類)が設けられています。バッテリーに貼付されているシールなどにインジケーターの見方が記載されているので、それを参考にチェックしましょう。
バッテリー液量をチェックしてみて、適正量の範囲内にあればボンネットを閉じてチェック完了です。なお、液面がLOWER LEVELよりも下にある場合は、すぐに近くのSSや専門の店舗まで相談してください。
バッテリー液が適正量を下回っていて、なおかつ新しいバッテリーにすぐに交換できない場合は、蒸留水を補充する方法もあります。大きく以下の3つの流れで補充作業を行います。
手順 | イメージ | ポイント |
---|---|---|
1.注入口のふたの溝部分に10円玉やメダルを差し込む |
|
|
2.差し込んだ10円玉やメダルをねじりふたを取り出す |
|
|
3.蒸留水をUPPER LEVELの少し下まで注ぐ |
|
最近のバッテリーは製品技術の向上もあり、バッテリー液の補充が必要になるほど減少することはめったに起こりません。ただし、万が一不具合によりバッテリー液が既定よりも下回った場合は、バッテリー上がりを引き起こす可能性があります。出先でバッテリーが上がったときの影響やロードサービスの費用を鑑みると、3カ月に1回を目処にバッテリーまわりを点検してリスクを回避するのがおすすめです。自分でチェックすることが不安な方はSSのスタッフに気軽にご相談ください。
【摂津鳥飼SS 堀家俊希さん】
※ENEOSジェネレーションズのSSで働くスタッフの仕事内容はこちらでも詳しく紹介→「カーライフビジネスを知る」